大腿骨近位部骨折
1 傷病名
大腿骨近位部骨折(大腿骨骨頭骨折、大腿骨頸部骨折、大腿骨頚基部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折)
2 傷病の原因等
大腿骨は頑丈で、比較的大きな力にも耐えられますが、交通事故においても、相当大きな外力がかかった場合に、骨折します。
3 症状
骨折部の疼痛、立位・歩行困難、可動域制限などがあります。大腿骨の血管が損傷することにより、大腿骨頭壊死を合併することがあります。
4 治療
基本的に手術療法がなされます(ガンマネイルやネイルプレートによる固定術)。内側骨折は血液循環が悪いため、骨癒合が難しいと言えます。さらに、疼痛が少ないために、発見が遅れることがあります。骨頭壊死が生じた場合は、人工骨頭置換術や人工股関節置換術がなされます。外側骨折は、骨癒合は良好です。
腓骨神経麻痺等を合併することがあります。
5 後遺障害
症状固定は、事故から半年経過してからなされます。内側骨折などの発見が遅れた場合は手術後半とイット経過してから症状固定となります。
股関節の可動域制限の場合は、8級7号、10級11号、12級7号に認定される可能性があります。なお、一下肢の用を全廃した場合(股関節、膝関節、足関節の可動域が10%以下のとき)は5級7号に認定される可能性があります。
大腿骨骨幹部骨折
1 傷病名
大腿骨骨幹部骨折(だいたいこつこつかんぶこっせつ)
2 傷病の原因等
交通事故との関係では、バイクに乗車中に事故に遭った場合に発生しやすいと言えます。骨折の内容も単純骨折から楔状骨折、複雑骨折と様々です。
3 症状
疼痛、歩行困難、出血性ショック等の合併の可能性あり。
4 治療
手術療法がとられることが多いです(ネイル固定、プレート固定、創外固定など)。
5 後遺障害
大腿骨の変形により12級8号が認定される可能性があります。
膝の靱帯損傷(前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯)
1 傷病名
膝の靱帯損傷(前十字靱帯(ACL)損傷、後十字靱帯(PCL)損傷、内側側副靱帯、外側側副靱帯など)
2 傷病の原因等
膝には、内側側副靱帯、外側側副靱帯、前十字靱帯、後十字靱帯の4本の靱帯があります。
交通事故による場合、膝の部分に大きな外力がかかると靱帯が損傷します。ひざがダッシュボードにぶつかって後十字靱帯が損傷を受けることがよくあります(ダッシュボード損傷)。膝関節は、可動域を確保するとともに、体重を支持するという機能があり、靱帯により関節が脱臼等しないように、保持されています。交通事故の被害に遭った際に、バイクに乗っていた場合にも受傷します。
3 症状
患部の疼痛、可動域制限、歩行が困難になります。
前十字靱帯損傷の場合は、ひざ崩れ(ひざに力が入らない)を起こすことがあります。
後十字靱帯損傷の場合は、疼痛と可動域制限が伴います。
4 治療
レントゲンでは靱帯は写らないため関節鏡やMRIの撮影により診断されます。前十字靱帯の損傷の場合は、多くの場合、前十字靱帯再建術を行います。後十字靱帯の損傷の場合は、保存療法が主体ですが、損傷の程度により再建術を行うこともあります。内側側副靱帯単独の損傷の場合は、保存療法がなされることが多いです。
5 後遺障害
前十字靱帯損傷及び後十字靱帯損傷の場合には、膝関節に動揺性が認められることがあり、8級7号、10級11号、12級7号が認定される可能性があります。
半月板損傷
1 傷病名
半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
2 傷病の原因等
大きく分けると、年齢的な要因と外傷性の要因に別れます。半月板は膝関節の安定と円滑な運動を担うひざのクッションの役割をしますが、加齢に伴い、変性していきます。交通事故により受傷する場合もあります。また、交通事故による場合は、前十字靱帯損傷等を合併することもあります。
3 症状
歩行時の疼痛、ひざのずれ、歩行障害、しゃがみ込んだり、正座をする場合の疼痛などがあります。
4 治療
半月板の損傷形態は、様々であり、保存療法で改善することもありますが、手術療法(一部の切除、縫合)等が選択されます。半月板の損傷はレントゲンからではわからないため、MRIを撮影する必要があります。手術をする場合は、関節鏡を用いて手術がなされます。
5 後遺障害
半月板損傷の場合は、神経症状として12級13号または14級9号に認定される場合があります。
大腿骨顆上骨折・大腿骨顆部骨折
1 傷病名
大腿骨顆上骨折、大腿骨顆部骨折(だいたいこつ・かじょう・かぶ こっせつ)
2 傷病の原因等
ひざ関節に近い部分での骨折をいいます。交通事故により、大きな外力が加わった場合にも発生します。
3 症状
受傷直後より、起立不能となります。患部に激痛が走り、腫れ、ひざ関節の可動域制限、ひざ関節の異常可動が認められます。
4 治療
転位が軽度の場合は、ギプス固定等の保存療法、重度の場合は、手術療法を行います(創外固定、プレート固定、髄内釘など)
5 後遺障害
ひざの可動域制限が残存した場合は、その程度により、8級7号、10級11号、12級7号が認定される可能性があります。可動域制限がない場合でも、神経症状として12級13号、14級9号が認定される可能性があります。
頸骨高原(プラトー)骨折
1 傷病名
頸骨高原(プラトー)骨折 (けいこつこうげんこっせつ)
2 傷病の原因等
頸骨のひざに近い部位は、関節面の骨の形状が平らなことから、高原(プラトー)と呼ばれます。交通事故においては、ひざ関節部分に過度の力(内反力、外反力など)が加わった場合に発生します。
3 症状
受傷直後より、起立やひざ関節運動ができなくなります。圧痛や腫れが出現します。
4 治療
多くの場合は手術療法となります。
5 後遺障害
膝関節の可動域制限として、8級7号、10級11号、12級7号が認定される可能性があります。
足関節顆部骨折
1 傷病名
足関節顆部骨折(そくかんせつかぶこっせつ)
2 傷病の原因等
足関節に過大な外力がかかることにより発生します。交通事故との関連では、バイクに乗車中に交通事故に遭った場合に多いと言えます。
3 症状
足関節は、脛骨、腓骨、距骨から構成されており、足関節部の骨折とは、脛骨、腓骨の足関節部分の骨折を言います。
外力が大きい場合は、脱臼骨折や開放骨折となる場合があります。症状は、足関節の可動域制限、疼痛、腫れがあります。腓骨神経麻痺等を合併することがあります。
4 治療
転位(骨のずれ)がなければ、ギプス等による固定の保存療法がなされますが、転位がある場合は、歩行に支障を来しますので、手術をすることが多いと言えます
5 後遺障害
足関節部の可動域制限として、8級7号、10級11号、12級7号が認定される可能性があります。
足部の骨折
1 傷病名
足部の骨折(そくぶのこっせつ)
2 傷病の原因等
足部には、距骨(きょこつ)、踵骨(しょうこつ)、足根骨(そっこんこつ)、中足骨(ちゅうそくこつ)、趾骨(しこつ)からなります。距骨、踵骨と足根骨の間の関節をショパール関節、足根骨と中足骨の間の関節をリスフラン関節といいます。踵骨骨折が足部の骨折では一般に一番多いと言われています。
3 症状
踵骨骨折では、かかとに荷重を受けられなくなるため、歩行が困難になります。強い疼痛や腫れがみられます。
4 治療
骨折の部位、症状に応じて保存療法や手術がなされます。
5 後遺障害
距骨の骨折の場合は、可動域制限として、8級7号、10級11号、12級7号が認定される可能性があります。また、そのほかの部位でも可動域制限や神経症状等により後遺障害等級が認定される可能性があります