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交通事故が実際に起きたら

被害者が事故直後にするべき5つのこと

もしも、自身が交通事故の被害者になってしまったときの対処法は次の通りです。

① 警察へ届けること

交通事故の加害者から警察に届け出ることは義務とされていますが、被害者が自らきちんと届け出をした方がよいです。自動車保険が使えるかどうかに関わることですし、加害者が自分に都合のいいことだけを伝えてしまうと、後で問題になります。通常は、どちらかが連絡しても現場に加害者と被害者がいるところに警察が来るので、現場に警察が来て話を聞いてもらっていれば、あとは警察官の説明や指示に従って下さい。

② 相手を確認すること

被害者の確認事項として、以下の項目が必要です。

・加害者の住所
・氏名
・連絡先
・加害者が加入している自賠責保険及び人に保険の会社名・証明書番号
・加害車両の登録ナンバー

最近は、携帯やスマートフォンのカメラは高性能であるため、車検証や運転免許証を撮影させてもらうのが簡単で良いかもしれません。また、業務中の事故の場合は、雇い主や勤務先の会社が責任を負うこともありますので、勤務先等の名称、住所、電話番号を聞いておきましょう。

③ 目撃者の連絡先をきくこと

通常は、事故原因は、現場で警察官に説明し、事実関係に誤りがなければ問題はありません。ただ、事故の態様についてもめる可能性があるときは、現場にいた通行人など交通事故の目撃者がいれば、話の内容や連絡先、氏名を聞いておくことができると良いと思います。

④ メモをとること

人間の記憶は、細かい部分など、正確に覚えていることはむずかしいものです。細かい事情については、気がついたときにメモしておきましょう。事故直後に問題がなかったとしても、後から、加害者が今までの主張を翻すなど、違う対応をしてくることもあります。そのときに、事故当時の事情をメモしておけば、後から思い出せるだけでなく、問題解決の有力な資料になり得ます。

⑤ 整形外科に行くこと

接触等の事故があった場合は、事故現場や事故直後に痛みなどの症状はなく、ほとんど怪我はないと思っても、病院や整形外科等に行って、医師の診断を受け、必要に応じて検査をしましょう。時間が経過してから、病院に行っても、事故との因果関係が問題になることもあります。

高齢者が被害者になった場合

1 高齢者が被害者となる交通事故の特徴

高齢者が何歳以上であるかは、難しいところですが、内閣府作成の交通安全白書によると65歳以上の分類を高齢者という位置づけにしておりますので、65歳以上を前提に話を進めます。まず、特徴としては、高齢者は人口が増加しているため、高齢者の交通事故死者数が多いという特徴があります。また、高齢者が歩行中等にあった事故は、重篤な結果につながることも多く、平成25年の交通安全白書によると、その致死率は約6.6倍にのぼるそうです。致死率が高い原因は、交通安全白書には記載されていませんが、もともと既往症を有していたり、体力が一度低下すると元に戻りにくい、ちょっとした衝撃でも大きな結果につながる等の理由が考えられます。

2 主婦である高齢者と交通事故

タイトルを「主婦」にしましたが、「主夫」も同様です。
高齢者が、交通事故の被害者にあった場合に、まず、確認する必要があるのは、その被害者が家事従事者かどうかです。家事従事者とは、他人のために炊事・洗濯等の家事をしている人のことをいいます。1人暮らしの人は、自分のために炊事・洗濯等をしますが、家事従事者には含まれません。高齢者でも職業を持っている方は、休業損害や逸失利益が発生する可能性がありますが、多くの方は無職であると思います。無職の場合は、休業損害や逸失利益を請求することはできません。
しかし、家事従事者は、それ自体が職業であるために、家事を休まざるを得なかったということにより、休業損害や将来の逸失利益を請求することが可能になります。

3 高齢者と休業損害

高齢者でも、現実に仕事をもっている方については、年齢に関係なく、休業損害が発生します。ただし、現実には仕事をしておらず、名前だけ「取締役」等になっていて、給料をもらっているという場合は、休業損害は難しいかもしれません。また、家事従事者と評価される場合には、対外的な意味で収入がないとしても、休業損害を請求できる可能性があります。

4 高齢者と慰謝料

交通事故の被害者になった場合に請求できる慰謝料は、大きく分けると①入院や通院をすることにより辛い思いをしたことを慰謝する入通院慰謝料(傷害慰謝料)と、②後遺障害が認定されて、後遺障害を有することになったことに伴う後遺障害慰謝料の二つがあります。

高齢者の場合も基本的には、慰謝料の考え方は、高齢者ではない場合と変わりませんが、後遺障害が事故とは直接関係なかったり、もともと被害者の方が有していた疾患等が原因で重い障害になったりという場合には、減額されることもあります。

5 高齢者と逸失利益

逸失利益とは、事故により、将来の収入が減少する可能性がある場合に、一定割合で、将来の収入減少分(現実に減少するかどうかはわからないので可能性に基づくものです)を賠償してもらうものです。将来も収入があること、働くことが前提になりますので、高齢者の場合は、無職の人については、厳密に言うと逸失利益を請求することは困難になります。

ただし、一見すると無職の場合であっても、家事従事者の場合は、職業があり、減収の可能性があるという評価がされますので、逸失利益の請求が可能になります。

現実的には、家事従事者や主婦はお金を稼いでいるわけではありませんが、その人が家事をできないとすると理論上は、誰かにお金を払って代わりにやってもらうことになります。そうすると、その分の出費が必要になりますので、主婦が家事をするからこそ、出費が抑えられ、出費が抑えられているということは収入があるのと同じである、と言う考え方をするのです。なお、年金受給者が死亡した場合には、将来にわたって年金をもらえたのにもらえなくなったということになり、収入がなくなるのは、働いている場合と同様ですので、逸失利益として請求できます。平均余命まで生きる前提での計算となります。(ただし、年金の種類によります)。

6 高齢者と被害者の素因

被害者の素因とは、被害者がもともと有していた事情によって、通常とは別に大きな損害が発生した場合には、加害者だけの責任ではなく、被害者にもともとそのような事情があったということで、被害者も損害の一部を負担すると言う考え方をいいます(素因減額)。

被害者の素因には、①心因的な要素②身体的な要素の二つがあります。

ただし、被害者の素因があるとして減額されるのは、被害者が疾患と言えるような病状をもともと持っていたような場合に限られます。よくあるのが、脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアを有していたが、痛み等はなく、症状はなかったというケースですが、このような場合、程度問題ではありますが、通常は素因減額はされないといえます。また、高齢者は、骨粗鬆症などにより骨がもろいなどのケースもありますが、単に高齢者というだけで素因減額がなされるわけではありません。保険会社は、そのような主張をしてくるかもしれませんが、冷静に対応する必要があります。

7 高齢者と加重障害の問題

加重障害とは、すでに「後遺障害」と評価できる障害を有していた場合に、事故により生じた後遺障害からもともとの後遺障害分をひいた評価をすることをいいます。例えば、事故により高次脳機能障害となり1級と認定されたケースで、もともと認知症等の症状があったというような場合、加重障害9級とされ、一定の損害賠償額が減額される可能性があります。

8 高齢者が死亡した場合の原因と交通事故との因果関係

ここでは、交通事故にあった高齢者の方が、事故による傷病とは別の傷病名で死亡した場合に、死亡の責任まで加害者に負わせることができるか、と言うことが問題となります。たとえば、交通事故により寝たきりになってしまった高齢者の方が、誤嚥による肺炎を起こし、死亡したとします。直接の死因は、肺炎ですから事故が直接の原因ではありません。しかし、事故がなければ、寝たきりになることはありませんでした。長期入院をしたからこそ、誤嚥しやすい状況が生まれ、肺炎を患いました。高齢者が肺炎を患うと死に至ることがあることは周知の事実です。

こういう場合に、事故と死亡の結果に因果関係があるのだろうか、と言う問題です。ここで問題になるのは、相当因果関係です。法的な問題です。医師が認定した死因と事故によって負った傷害がまったく別のものであっても、法的な評価として、事故と死亡との間に因果関係が認められることはあります。

以下、いくつかの裁判例を紹介します。

【1 事故と肺炎による死亡との因果関係を認めた判決 / 神戸地方裁判所 平成10年1月30日判決】
・被害者は、事故当時71歳の無職の男性。
・既往症 糖尿病及び慢性膵炎、腰椎圧迫骨折、白内障、肺結核、肺気腫の既往症があった。また、本件事故による受傷前からうつ病、自律神経失調症などで石田病院に通院し、種々の向精神薬を内服していた。
・傷害の内容
被害者は本件事故により頭部外傷Ⅱ型、腰部挫傷などを受傷した。
・被害者は、「交通外傷受傷が精神的要素の悪化を介し、さらに、身体的機能の障害を介して、活動性低下をもたらすことによって、肺炎発症をもたらしたもので、肺炎を直接の死因として死亡したとしても、これらは、通常人おいて予見することが可能な事態といというべきであるから、被害者の肺炎発症と本件事故との間、更には被害者の死亡と本件事故との間には、いずれも相当因果関係があるというべきである。
・なお、既往症等の存在から損害額の6割を減額した。
・神戸地方裁判所平成14年2月14日判決も、左片麻痺を有する85歳の男性が、事故で肋骨骨折等を負った事案で、肺炎を直接の死因として死亡した事案において、事故と死亡の因果関係を認めている。
・大阪地方裁判所平成8年1月25日判決も肺炎による死亡と事故の因果関係を認めている。68歳の女性が、左側頭骨陥凹骨折、頭蓋底骨折、外傷性クモ膜下出血、左鎖骨骨折、左多発肋骨骨折、小脳挫傷、左血気胸・肺挫傷等を負い、事故後、しだいに脳萎縮が進行し、ほとんど植物状態になった。意識障害、四肢運動障害により自賠法施行令別表の後遺障害等級表1級3号の認定を受けた。その後、肺炎を発症し、退院ことなく死亡した(死亡時71歳)。
・神戸地方裁判所平成10年9月3日判決は、急性肺炎による死亡と事故との因果関係を認めた。被害者は79歳高齢男性で、事故による傷害の内容は、脳挫傷、外傷性くも膜下出血であった。事故後から意識不明になり、昏睡状態から回復しないまま4ヶ月が経過。急性肺炎を発症し、それから2日後に死亡した事案。

【2 胃潰瘍による失血死との因果関係を認めた判決 / 大阪地裁 平成9年1月23日判決】
・被害者は、68歳男性。
・傷害の内容
頭部外傷、右第3、第4、第5肋骨骨折、右血胸、肺挫傷、腎損傷、左足関節脱臼骨折の傷害。
本件事故によって被害者が受けた外傷と、もともと被害者に発症していた胃潰瘍とが相俟って、被害者が死亡したと認めるのが相当であり、本件事故は、被害者の胃潰瘍を増悪させ被害者を死亡させたものとして、本件事故と被害者の死亡の結果との間には相当因果関係を認めることができる、と判示した。
・なお、素因減額として7割分の損害は控除されている。

【3 尿道感染症を原因とする敗血症で死亡した事案で、事故との因果関係を認めた判決 / 大阪地方裁判所平成9年11月20日判決】
・被害者は、80歳の女性。
・事故当初は、骨に明らかな亀裂は認められず、腰背部捻挫で向後約1週間の加療を要する見込みであると診断された。
数日後、腰椎レントゲン写真にて第3腰椎に圧迫骨折が認められ、頸部、腰部捻挫、腰部打撲(第3腰椎圧迫骨折)の診断を受けた。
被害者は、本件事故後は、食欲が減退し、また、尿量も少ない状態が続いた。直接の死因は尿路感染症を原因とする敗血症であり、本件事故による障害そのものによるものではないことが明らかである。被害者は、本件事故に遭うまでは日常生活には格別の支障はない状態であったのに、本件事故によってほぼ寝たきりの状態となり、これを契機に体力が低下し、既往症と相侯って健康状態が悪化して、ついには死亡するに至ったものと認められるから、被害者の死亡と本件事故との間には相当因果関係を認めることができるというべきである。
損害の公平な分担という見地から、民法722条2項の趣旨を類推して被害者らに生じた損害から一定割合の減額をすべきである。減額すべき割合は2割とするのが相当。

【4 肝不全による死亡との因果関係を認めた判決 / 東京地方裁判所平成11年2月23日判決】
・被害者は64歳男性。
・既往症は、肝性脳症、肝硬変 症状は安定していたものの、状態としては悪かったとも言える。
・傷害内容
胸腹部打撲内出血、背部打撲
・被害者は、「このような状態の肝硬変があったところへ、外傷の影響によって肝不全に陥ったものと認められる」「外傷と肝硬変とのそれぞれの寄与の割合については、医学的な見地から、どちらが何割ということは困難である。」「本件事故と被害者の死亡との因果関係は否定できない。」「一方で、亡Aの病状は悪いながらも安定しており、事故がなければ、この時点で死亡するということはなかったといえる。このような観点からは、本件の事故の死亡に対する寄与割合は60%と考えるべきである。」

【5 急性心筋梗塞による死亡との因果関係を認めた判決 / 神戸地方裁判所平成12年7月18日判決】
・被害者は82歳男性
・傷害の内容 肋骨骨折、後腹部腰部打撲、全身打撲等
・本件事故と被害者の死亡との間には因果関係があることは認められるものの、直接死因は急性四筋梗塞疑いであって、その原因は冠動脈硬化症であり、本件事故による受傷がその発症原因であることを客観的に認めるに足りる証拠はないことに照らせば、被害者の俊一の死亡による慰謝料は1200万円と認めるのが相当である。
・東京地方裁判所平成14年3月12日判決は、96歳女子が歩行中に衝突され、左腓骨骨折、頭部挫創等で入退院を繰り返し、4か月後に心不全で死亡した事案で、事故との相当因果関係を認めた。
・大阪地方裁判所平成14年5月23日判決は、93歳男性が、事故により右大腿骨頸部骨折を負い、事故から約2か月半経過した後に急性呼吸不全により死亡した事案において、手術及び及び長期間の入院生活などから、体力や免疫力の低下に陥ったものと、本件事故との相当因果関係は認めた。なお、そんがいについては70%の素因減額。
・名古屋地方裁判所平成17年1月21日判決は、68歳男性が、事故により骨盤骨折を負い、8日後に腸閉塞を原因とする心不全で死亡した事案につき、事故との相当因果関係を認めた。
・神戸地方裁判所平成10年7月9日判決は、81歳の被害者が、僧帽弁閉塞不全(高度)、僧帽弁狭窄症、三尖弁閉塞不全症の既往症を負っており、事故により脳挫傷の傷害をい、直接の死亡した原因は脳浮腫であった事案において、因果関係を認めた上で事故の死亡に対する寄与度は50パーセントと判示した。

【6 認知症発症と事故との因果関係を認めた判決 / 神戸地方裁判所平成13年8月8日判決】
・被害者は81歳男性
・「アルツハイマー型老年痴呆症について、その原因は、交通事故直後から骨折、もしくは外傷性硬膜性血腫により長期の臥床を強いられたことにある」、「同疾患と交通事故との直接の因果関係はないが、亡被害者につき、交通事故により入院生活を強いられたことが同疾患の発症に大きく関与したと言わざるを得ない」、「脳血管性痴呆とアルツハイマー型老年痴呆とは合併の関係にあり、外傷による硬膜下血腫あるいは器質性脳障害は脳血管性痴呆の直接原因と考えられるし、その後の身体的治療のためやむを得ず長期の入院加療を要したことが2次的にアルツハイマー型老年痴呆症を引き起こした」
・名古屋地方裁判所平成14年8月16日は、71歳女性がバスを降車中に扉に左肘が挟まれ、左肘打撲症を負った事案において、その後、脳梗塞・左片麻痺の障害を残した事案において、相当因果関係を認めた。なお、被害者にもともと多発性空洞性脳梗塞が認められたことから、損害の6割を減額した。

幼児・児童・生徒・学生が被害者になった場合

1 症状がひどくなることはないの?今後ひどくなったらどうするの?

(1) 自分の家族やお子さんが事故の被害者にあわれた場合に、一番気になることは、医師から症状固定と診断されて、治療は終了になったけど、今後、今よりも症状がひどくなって、認定された後遺障害よりも重い後遺障害になったら、どうしようという不安がおありになると思います。特に、物理的な骨折などではなく、脳に高次脳機能障害があらわれているようなケースでは、そのようなご心配があることと思います。
一般に、高次脳機能障害は回復することはあっても悪化することはないと言われています。しかし、個別の事情もありますし、すべてがそう言い切れるものなのかは未知の部分もあるかもしれません。

(2) 症状固定は、状況が一進一退を示す状況で、これ以上劇的には良くも悪くもならないという状態をいいます。そして、後遺障害は、症状固定時の状況を前提に、診断がされます。万が一、症状固定時よりも、将来的に症状が悪化した場合は、その時点において、過去にさかのぼって損害賠償請求することは全く不可能というわけではありません。
症状固定時に現れていなかった症状は、示談や裁判での解決には含まれていないと考えることになります。ですので、万が一将来悪化したというような場合は、別途その状況に基づいて、賠償請求が可能かどうか検討する事となります。

(3) ただし、別の問題があります。それは、因果関係の問題です。
万が一、症状が悪化したという場合、それが事故が原因で悪化したといえるかどうかが因果関係の問題です。おそらく、後になって、悪化した症状は症状固定時には存在しなかったということが証明できても、「それが事故が原因だ」と証明することは難しい場合があると考えられます。医学的な資料は、保存期間が限られているため、症状固定時の時点で取得した上で、ご自身で保管されるのがよいでしょう(デジタルデータにしておけば尚良いと思います。)。

2 学校を留年することになったら

お子さん(幼児・児童・生徒・学生)が、交通事故の被害にあい、特に重い傷害を負った場合、入院が長引いて、進級できなかった、留年した、就職が遅れた、などの状況が発生する場合があります。この場合に遅れた時間そのものを取り戻すことはできないとしても、留年や就職が遅れればその分、学費など特別な費用がかかります。

これらの費用について、加害者側に負担してもらえるかと言う問題ですが、被害者の被害の内容、程度、進級できなかったり、留年した理由等を考慮して、認められるケースがあります。学校を休学したために他の人について行けなくなった。したがって、学習塾や家庭教師をつける費用が認められたり、事故が原因で留年することになった場合に、授業料やアパートの家賃を認めた裁判例等があります。また、事故が原因で就職が遅れた場合には、まだ働いていなくても、就職した前提で症状固定時までの休業損害を認めている裁判例もあります。

3 入院や通院に付き添った損害は

(1) 入院の付き添い費用について
現在は、完全看護の病院が多いこともあり、基本的には、単に、家族の誰かが入院中付き添ったというだけでは、その家族に発生した損害(入院付き添い費用)を請求することは難しいと言えます。しかし、医師の指示があるときはもちろん、症状の重さ、被害者の年齢等により、入院付き添い費が認められることもあります。幼児や児童の場合は認められやすいと言えるでしょう。

(2) 通院付き添い費用について
通院の際も家族が付き添うことは、入院の場合以上によくあることです。しかし、通院の場合は、単に送迎をしたと言う程度では付き添い費用として、損害は認められません。年齢が小さい場合や被害者の症状が重い場合等には、認められ安いと言えます。幼児や児童の場合は認められやすいと言えるでしょう。

4 逸失利益について

逸失利益とは、いわば将来の休業損害をいいます。将来、事故による後遺障害がなければ稼ぐことができた収入が減少する可能性があるため、損害として認められるものです。休業損害は、働いていない人には認められませんので、幼児や児童は基本的に認められません。学校を休んだというのは休業損害は発生しません。ただし、生徒もアルバイトをしていたり、働きながら勉強している場合は休業損害も発生することもあります。
問題は、逸失利益ですが、今はまだ働いていなくても、将来は誰もが働く可能性があります。ですので、将来の収入が減少する可能性に基づいて発生する逸失利益についても、幼児・児童・生徒・学生も請求することができます。

現実に今の収入はないため、賃金センサス相当の収入があると見なして計算をします。賃金センサスといっても、男女合わせたものや、男性だけのもの、また、学歴別に定められているものなど様々なものがありますが、どの賃金センサスを使うかは、事情やどのように賠償請求をしていくかに関連しますので、専門家にご相談されることをおすすめいたします。

5 過失相殺について

「本件交通事故発生の責任の2割は1歳の子どもにある」という結論がもしあったとしたら、誰もが首をかしげますよね。1歳の子どもに責任ていわれても・・・と思うはずです。未成年者の過失を問う場合は、何歳でもよいというわけではなくて、事理弁識能力が備わる小学校入学の前後あたりから、と言われています。この時期になれば、交通ルールも簡単なものは理解できるであろうという前提です。ですから、小学校入学した後のお子さんが急な飛び出しをしたような場合は、本人の過失として考慮されます。
では、5歳の子どもならどうかといいますと、「被害者側の過失」といって、例えば子どもの親や監督をする人に過失がなかったかが問題になります。

6 過失割合について

交通事故の過失割合は、事故の態様という客観的な事情により決められます。そして、被害者の年齢は、通常は重視されませんが、一定程度は考慮されています。多くの事案において、幼児は10%程度、低い過失になります。また、児童は5%程度低い過失になります。同様に身体障害者は10%程度低い過失に、高齢者は5%程度低い過失となります。

交通事故においては、車やバイク等は、一歩間違えば凶器になり得るので、社会的に弱い立場に人は強く保護されているものと言えるでしょう。

主婦が被害者になった場合

1 主婦と基礎収入について

専業主婦(家事従事者)は、収入はありません。しかし、仮に、その人が家事をできなければ、他の人に頼めば、お金がかかります。そうすると、家事をしてもらうためにお金を払う必要がない状況は、主婦が家事をしているからだ、という考え方をします。主婦が仕事を休むという場合は、休業損害が発生するのです(理論上、他の人にお金を払って家事を依頼しないといけなくなるので)。

問題は、じゃあ、主婦はいくら稼いでいるの?ということです。

れは、かなり難しい問題です。難しい問題なので、裁判実務は簡単な答えで動いています。女子の賃金センサスの平均額を採用しているのです。女子の平成25年学歴計年収額は353万9300円です。したがって、主婦は年収353万9300円あると見なされます。

2 兼業主婦の収入はどうなるか?

専業主婦は、年間353万9300円程度の収入があると見なされます。では、例えばパートで月7万円稼いでいる兼業主婦はどういう風に計算をするのでしょうか?実は兼業主婦も専業主婦も基本は、同じように平均賃金センサスを使用します。ですので、353万9300円程度の収入があると見なされます。

ただし、兼業主婦や主婦でも、現実に稼いでいる収入が賃金センサスよりも高い場合は、その高い金額が基礎収入になることはいうまでもありません。

3 主婦の休業損害は一日いくら?

専業主婦の場合、1のとおり基礎収入は353万9300円あるとみなされますので、
353万9300円÷365=約9696円 一日あたり、9696円となります。

なお、保険会社が一日あたり5700円という金額を提示してくることがありますが、これは自賠責の基準であり、裁判基準ではありません。

また、休業損害を考える上では、兼業主婦の場合は、若干別の要素も必要になります。
例えば、パートで月7万円稼いでいる兼業主婦がいるとします。パートの方を休んでいなければ、通勤した日の休業損害は、その分だけ減ることになります。つまり、パートで4000円稼いだ日に、家事ができなかったと言って、9696円が休業損害と主張するのはおかしいのはわかりますね?そこでこのような場合は、一定程度の調整が入ります。また、家事はできないけど、パートの仕事はできるという状況がずっと続くのもおかしいとみられることもあるでしょう。

4 主婦と逸失利益

主婦には休業損害が認められるように、将来の休業損害という意味での逸失利益も認められます。逸失利益は、交通事故の怪我により後遺障害が残った場合に、将来の収入減少の可能性がある事を理由に、収入の一定割合について、賠償を受けられるものです。

主婦には収入はありませんが、女子の平均賃金を稼いでいると見なされますので、休業損害が認められるのと同様に、将来の収入減少可能性もある、つまり、逸失利益が認められることになります。

5 主夫と交通事故

主夫の場合は、主婦と同じかどうか、という質問をたまに受けることがあります。いうまでもなく、重要なのは、主婦か主夫かという性別に関することではなく(LGBTがこれだけ浸透してきた現在、性別を二つに分けること自体意味がないですが、便宜上ご容赦下さい。)、「自分以外の誰かのために家事をするかどうか」、つまり、家事従事者と言えるかどうかです。

家事従事者であれば、性別に関係なく、休業損害や逸失利益を請求することができます。ただし、ポイントは、基礎収入は、男か女かではなく、女子の平均賃金となります。性別に関係なく、家事従事者の仕事の内容は同じであるはず、と言う考え方が背景にあります。

交通事故被害でお悩みの方へ

  1. 交通事故問題でお悩みの方へ

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  2. 保険会社は被害者の味方なのか?

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  12. 交通事故が実際に起きたら

    もしも、自身が交通事故の被害者になってしまったときの対処法は次の通りです。

  13. 事故等が原因で死亡した場合

    1 加害者に損害賠償請求をで…

  14. 後遺障害の診断名と傷病名

  15. 解決までの手続の流れ

    交通事故発生から、解決までの手続の流れは次のとおりです。